イライラ、意欲低下、情緒不安定
セロトニンが不足や視床下部の変調
更年期で起こる気分の浮き沈みやイライラ、不眠、意欲低下などの精神神経症状には、さまざまな原因が考えられます。
まず、エストロゲンの減少による自律神経への影響です。女性ホルモンのエストロゲンは、脳内のセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の働きにも関わっています。これらの神経伝達物質は幸福感や生きる意思を司っているホルモンの一種です。そのため更年期にエストロゲンが減少してくると、憂うつな気分や意欲の低下、疲労感を感じやすくなります。さらに、寝つきが悪い、夜中に目が覚める、寝ても疲れがとれないなど、睡眠にも影響がでてきます。
更年期は子どもの自立や親の介護など、生活環境面でも大きな変化を迎える時期でもあり、外で働く女性が増えた現代では、仕事上の悩みや不安を抱える人も多いでしょう。更年期は女性のターニングポイントとなりますので、「女性としての魅力が減少してしまう」という心配も大きなストレスとなるでしょう。
これらの対処法は、まずは自分の状態を「女性ホルモンの減少による、誰にでも起こる現象」として受け止めることが大切です。周りの人たちもそのことに理解を示しましょう。そして、自分がリラックスできるものや居心地の良い環境を見つけたり、できるだけ規則正しい生活を心がけます。屋外で散歩するなど軽く体を動かし、活動と休息のメリハリをつけることで、気持ちや睡眠にも良い影響にはたらきかけます。
症状がひどい場合は、迷わず医者に相談をしましょう。
おすすめ食材と食べ方
抗酸化物質、ビタミン類、ミネラル類
セロトニンのもとになる必須アミノ酸のトリプトファンを含む食材や、トリプトファンをセロトニンに変換する際に必要な必要なビタミンB群、C、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛などを含む食材を、バランスよく摂りましょう。
骨密度の低下
女性ホルモンの減少により骨がもろくなる
女性が年齢を重ねるごとに気をつけたい病気が、骨粗しょう症です。骨密度が低下して骨がもろく弱くなり、ちょっとしたことで骨折してしまうようになります。また、更年期には転倒しやすくなるので注意が必要です。
骨密度の低下が進むのは更年期からです。骨はカルシウムの貯蔵庫でもあり、全身のカルシウム量を調整するために、骨を壊して血中にカルシウムを供給する一方で、食事からの十分なカルシウムにより新しい骨をつくる「骨形成」を繰り返しています。これらに大きく関わっているのがエストロゲンです。骨形成を促し、骨を壊す働きを制御する働きを担っています。
更年期にはエストロゲンが減少するため、骨を壊す働きは進行しますが、新しい骨はつくられにくくなるため、骨密度が減ってしまいます。女性はもともと骨密度が低いのに加え、妊娠・授乳の影響で骨に十分なカルシウムが蓄積されていないことがあります。そこに更年期や加齢の影響もあり、骨粗しょう症のリスクが高まり、骨折、腰や背骨が曲がりやすくなるということです。
骨粗しょう症予防のためには、必要な栄養素を十分に摂取することです。とくに日本の女性はカルシウムの摂取量が不足しています。さらに更年期には、若い頃に比べて、栄養素の吸収率が低下しますので、カルシウムが効率的に摂れる牛乳や乳製品を日に2回以上、こまめに摂るようにしましょう。
また、骨や筋肉は運動をすることで強くなります。速歩や筋トレなど筋肉を動かす習慣をつけるようにしましょう。毎日運動をするのが理想的ですが、頑張りすぎると続かなくなります。継続して行うには、テレビを見ながら、料理をしながらなど「ながら運動」のような負担にならないような、自分に合うやり方で軽い運動を取り入れてみましょう。
おすすめ食材と食べ方
良質のタンパク質、カルシウム、ビタミンD
カルシウムをしっかり摂ることはもちろん、骨形成を促したり、骨をしなやかにする栄養素も忘れずに摂りましょう。カルシウムやタンパク質を効率的に摂れる牛乳や乳製品、卵、ビタミンDが豊富な魚介類などを絶極的に摂りましょう。
のぼせ、ほてり、発汗、動悸、疲労感
自律神経の乱れが原因
「突然、身体が熱くなって汗が吹き出る」「暑いと思ったら、しばらくすると背中がゾクゾクする」更新期には、「ホットフラッシュ」に代表される、のぼせ、ほてり、発汗などの体温調整が、うまくできなくなる不調が起こりやすくなります。ほかには、心臓が急にドキドキしたり、めまい、頭痛、疲労感、などを感じることもあります。
こちらは更年期の不調として代表的なもので、自律神経の乱れによって起こります。自律神経は、体温調整や心臓の鼓動といった、生きていくのに欠かせない身体の機能をコントロールしていて、脳の視床下部の指令によって動いています。この視床下部は、さまざまなホルモンの分泌を制御する脳の中枢です。このように視床下部という神経の核を通じて、ホルモン分泌と自律神経系は互いに影響し合ってます。そのため、更年期で女性ホルモンのバランスが崩れると、自律神経系も乱れやすくなるということです。
自律神経系症状の緩和には、心身のリラックスが大切です。入浴はシャワーで済ませず、ぬるめの湯船に浸かるのがおすすめです。就寝の1時間くらい前に入ると眠りやすく、さらに質の良い睡眠につながります。また更年期には、身体面、美容面でどうしても「老い」を感じてしまうことや、人によっては子離れも重なることから、自信が無くなったり、空虚な気持ちになりがちです。このような精神状態の変化が、重なってしまうこともあります。
更年期は誰にでも訪れる一時的なものであり、時期が過ぎれば不調も治ってきます。自分自身を責めず、また家族や友人などの周囲の人にも相談しながら、うまく乗り切ることが大切です。
おすすめ食材と食べ方
抗酸化物質、ビタミン、ミネラル類
自律神経の働きを助ける栄養素は、ビタミンやミネラル類、抗酸化物質です。ビタミンEやC、カロテノイドを豊富に含む緑黄色野菜を積極的に摂りましょう。また、大豆に含まれるイソフラボンは、抗酸化力や女性ホルモンに似た働きを持っているので合わせて摂るようにしましょう。
食事だけでなく適度な運動で効果アップ
健康を保つためには、食事に気をつけるだけでは不十分です。食事をともに適度な運動をして、十分な睡眠が、健やかな生活に必須の3要素になります。とくに運動は、食事とセットで考える必要があります。
例えば、骨粗しょう症の予防には不足しがちなカルシウムや良質のタンパク質、ビタミンDなどの栄養素が欠かせません。さらに速歩や筋トレなど、骨に刺激を与える運動を組み合わせることで、更年期に減少する骨量を効率よく増加させることができます。また、運動をすると全身の血流が上がり、食事で摂った栄養を骨を含めた全身の細胞に届けることができます。
ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動と、筋トレなどの無酸素運動を組み合わせるのが理想的です。できれば週に2〜3回、20分〜30分が目安ですが、大切なことは継続することです。無理のない程度に、日々の生活に取り入れてみましょう。
それぞれに必要な適量の栄養素
+
適度な運動
↓
不調改善
更年期のいろいろな不調
①のぼせ、ほてり、発汗、動悸、疲労感
②骨密度の低下
③イライラ、意欲低下、情緒不安定
④肌の乾燥、シワ
⑤高血圧、脂質異常症
⑥記憶力の低下
症状によって必要な栄養素は異なります
妊娠・出産に備えて身体を整える働きを持つ女性ホルモンは、女性の健康を支える重要な役割も果たしています。更年期は、卵巣機能の衰えにより、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少にともない、心身にさまざまな不調が現れます。
さらに、生活習慣病のリスクも高まります。これは、女性ホルモンのサポートが得られなくなるため、これまでの好ましくない食事や生活習慣の悪影響が体調に現れやすくなります。残念なことのようにも思えますが、自分の生活を振り返り、適切な食事や軽い運動をするなど、生活習慣を改善できるチャンスでもあります。
身体に現れる不調は、栄養不足や摂りすぎを知らせるサインです。人生100年といわれる時代に、更年期後も老化を抑えて、生き生きとした健康な生活を送れるよう、食事や生活習慣を見直してみましょう。
血圧を下げることで疾病予防
カルシウム・カリウム・マグネシウム
高血圧の大きな原因のひとつが、塩分(ナトリウム)の摂りすぎです。塩分濃度を調整するために血液量が増えてしまうため、血管への圧力が高まります。これが過剰な塩分が高血圧を引き起こすしくみです。酢やハーブ、スパイス、ダシなどを上手に使って、食事の塩分量を少しずつ減らしましょう。
食事に取り入れたい栄養素が、カルシウム、カリウム、マグネシウムなどのミネラルです。これらは腎臓でナトリウムを尿などで体外に排出させる働きがあります。そのため、カルシウム、カリウム、マグネシウムも高血圧予防に欠かせない栄養素になります。
積極的にミネラルを摂る
牛乳や乳製品、大豆製品などのカルシウム源のほか、カリウム、マグネシウムの多い野菜、海藻、ナッツ類などを摂って、積極的にナトリウムを排出させましょう。
塩分を控えた食事
塩分摂取量の目安は1日6.5g未満です。酢やスパイス、ダシなどで味付けを工夫しましょう。
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